る学校では、「開かずの扉」があると噂されていました。
今まで誰もその扉を開けたことがない、という話を上級生から下級生に伝わり続けていました。
どこにあるのかは自分で探せ、という話で、実際に開かずの扉を見たという生徒は少なかったのです。
そのため、興味がある生徒は昼休みなどを利用しては探し、見つからなくて諦めてしまうということが続いていました。
ある生徒は、友人数名のグループでその話を聞き、ひと月ほど探し続けていました。
そんなある日、担任の先生に頼まれて資料室まで授業で使う資料を取りに行くことになりました。
しかし、彼は資料室の場所を知りませんでした。
普段は使わない、というか、存在自体知らずに卒業する生徒の方が多いほどでした。
実際に滅多に使わない場所なのですが、どうしても必要な資料があるのだとか。
少し量が多いので、数人で行くように、と資料室の場所を教えてもらい、友人のグループで資料室に向かいました。
普段は陰になっている場所で、近くまで行かないと壁と見間違うような場所があり、そこに資料室はありました。
すると友人の一人が、不自然な扉を見つけました。
部屋の名前などが記載されておらず、他の部屋の扉とは違う間隔の場所にポツン、と佇んでいました。
見た感じ、鍵が掛かっていないようで、興味本位からその扉を開けようとしますが、いくら力を込めても全く開きません。
「ひょっとして、これが開かずの扉なんじゃないか!」と、メンバーは大喜び、しかし、時間が迫っていたので後日、改めて調べることにしました。
その日の夜、元々霊感があったその生徒は、一人で夜の学校に忍び込み、例の「開かずの扉」までやって来ました。
意を決して扉を開けようとすると、意外にもすんなり開いてしまいました。
拍子抜けした彼は、そのまま中に入ってみることにしました。
すると、中は真っ暗で何も見えません。
入口から入ってくるわずかな月明かりを頼りに奥へ入ろうとすると、奥の方から「おいで、おいで、こっちにおいで」という声が聞こえてきました。
気味が悪くなった彼はそのまま逃げ出しました。
その扉をしっかりと閉め、一目散に逃げ帰りました。
翌日、例の扉の前に集まった彼らはそこで担任の先生に出会います。
昨日使った資料の一部を返しに来ていたのです。
そこで、開かずの扉について聞くと「あぁ、コレな。偽物。」と、意外なことを言ってきました。
「これな、この建物を作った当時の大工さんが、壁を作るときにいたずら心で扉っぽく作ったんだ。
つまり、開かずの『扉』なんかじゃなくて、『開くわけがない壁』なんだよ。」と言いいます。
実際、資料室内から見てみると、その扉っぽい壁の内側は資料室にあたり、内部はただの壁になっていました。
みんなは笑っていましたが、その「扉」を開けてしまった彼だけは、冷や汗が止まりませんでした。
コメント 0
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。