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仕事を終えた男が帰宅途中、何気なく空を見上げると、雲一つない星空が広がっていた。

「星空を見たのなんて何年ぶりだろう」

日々の忙しさに追われていた男は、その星空にホッとするものを感じていた。
それからというもの、男は自宅のベランダから夜空を見上げることが日課になっていた。

そんなある日、向かいのマンションに同じく、夜空を見上げている女性がいることに気づく。
「あの人も夜空が好きなんだな」
なんとなく親近感を覚えながらも、男は夜空を見上げることを続けていた。
いつしか男は、その星を見る女性に恋心を抱くようになっていた。というのも、男が星空を見ている日は必ず彼女も夜空を見上げていたのだ。
「彼女は一体どんな人なんだろう。あっちも自分が星空を見上げているのを知っているんじゃないかな?」
いてもたってもいられなくなった男は、思い切ってその女性の部屋を訪れることを決心した。

期待に胸を膨らませながら、彼女のいる部屋へ向かう。到着して部屋の呼び鈴を鳴らすが、いつまでたっても返事がない。
しびれを切らしてドアに手をかけてみると、鍵は開いていた。

おそるおそる部屋へ入ってみると、中は真っ暗だった。カーテンの開いた窓からは月明かりが差し込んで、女性の姿を照らしていた。
しかし男は、その女性の姿をみて凍りついた。

なんと女性は、窓際で首を吊って死んでいたのだ。

首を吊ったその姿は、まるで夜空を見上げているように見えていた。




※この話は元は筑波大学の学生寮で実話だったはずです。


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