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『コンコンコン』 
僕は殺人者の家の戸を叩いた。 
殺人者は出てこない。 
なぜ出てこない。 
『コンコンコンコンコンコンコンコン』 
僕は殺人者の家の戸を叩いた。 
殺人者は出てこない。 
なぜ出てこない。 
『コンコンコンコンコンコンコンコンコンコン』 
僕は殺人者の家の戸を叩いた。 
殺人者は出てこない。 
なぜ出てこない。 

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いるのはわかっている。 
いるんだろ。 
なんで出てこないの。 
出ろ。出ろ。出ろ。出ろ早く出ろ。 
いるのは分かっている。 
出ればお前は幸せになれる。 
僕も幸せ。母も幸せ。妹も幸せ。父も幸せ。 
みんな幸せ。 


気づいた時、その手紙は濡れていてインクが滲んでいた。 
私はその手紙をくちゃくちゃに丸めてゴミ箱に捨てた。 
何なんだ。何でこんなことになるんだ。
ゴミ箱に捨てた手紙に視線を向ける。
健二が手紙から出てくるような気がした。 
私は台所に行き、その手紙を燃やした。 
私は手紙が燃え尽きるまで見守った。 
なかなか燃えなかった。このまま永久に燃え続けるのではないのかと不安に思っていた。 

その日はバイトが入っていたけれど、部屋から出れそうにないので、友達に電話し代わってもらった。 
私はじっと玄関を見つめながらその日を過ごした。
他に何もする気が起きなかった。ただ玄関を見つめていた。 
誰かが訪れるのを待つかのように。 

次の日は大学の講義があったので、誰かに代わってもらうわけにはいかず、部屋から出なければならなかった。 
家をゆっくりと出る。何年か振りに太陽の光を浴びたような気がした。


大学に行き、無事講義も終わり、友達が飲みに行こうと誘ってきた。
私は嫌な気分を吹っ飛ばすために飲みに行こうかと思ったが、酔って帰ってもし健二がいたら逃げ切れない。
「都合が悪い」と言い断った。 

帰りにホームセンターに行き、痴漢撃退用のスプレーとブザー、ガムテープと非常食、木の板をかごに入れ、
レジに向かおうとした時、あるものが目に入った。 
金属バット。夢で健二を殴っていた金属バット。 
買おう…。これがあればあいつを殺せる。 
この非現実的な時間が終わる。これを買えば。

手にしようとしたとき、はっと目が覚めたような気がした。 
『私は殺人者にはなりたくない』
その言葉が頭に浮かんだ。 
なんで私はこんなことを思うようになったのだろうか。 
なにが私を変えたのだろうか。自分の体が誰かに乗っ取られていく感じがした。 
気が変わらないように急いでレジに向かった。 

本屋に行き、『撃退!ストーカー、通り魔、痴漢、盗難・女性のための防犯マニュアル』を買い、
スーパーで長持ちする食材を買って、家へと向かった。 

スプレーをかばんで隠しながら行き、無事家にたどりりついた。 
すぐに計画していたことを開始する。 
窓の鍵がかかっているかを確認し、木の板をガムテープで窓に貼り付けた。 
窓に人影が写るのが怖かったから付けたと思う。
郵便ポストにも木の板をつけたかったが、木の板が足りなかったので、ガムテープだけで我慢した。 








その日は疲れたので、非常食を食べ、シャワーを浴び、防犯マニュアルを軽く読み、眠りにつこうとした。 
眠れる気はしなかったのだが、いざベットに入って目をつぶっていれば自然と寝れるもんだろうと思い、
ベットに向かい、その日は寝れたと思う。 

朝起きて一番に玄関に向かった。
郵便ポストにつけていたガムテープが何かで切られていて、また一通の黒い封筒が落ちていた。 
中身を見ずに捨てようと思ったが、どうにも気になるったので見ることにした。 

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僕は今日も殺人者の家に向かう。 
今日は出てくれるかな。 
出てくれるといいな。 
はやく会いたいな。 
僕はあいつの家の前に辿りついた。 
僕は前きたときと家の様子が違うのに気がついた。 
無駄なのに。こんなことしても無駄なのにね。 
なにやってるの。 
こんなことするならはやく僕と会えばいいのにね。 
殺人者の考えは僕には分からない。 


今度は燃やさずにトイレに流す。 

ベットの上で考え事をしていた。 
何を考えていたかは正確には覚えていないが、 
でもたぶん、これからどうあいつから逃げようか、どうやって殺される前にあいつを殺そうか、
なんて考えていたと思う。 
今思うと、精神が普通じゃないのかもしれない。 
一回病院にでも行くべきだろうか…。 

その日もバイトを代わってもらおうかと思ったが、さすがに休めない。
生活費が足りなくなっては困るので行くことにした。 

バイト先で平凡な時間を過ごし、この平凡がずっと続くように願いながら家に帰ることにした。
マンションの入り口が見えてきた時、人影がマンションから出てきた。 
私は自動販売機に隠れた。 
「こっちに来たら終わりだな…」
カバンから痴漢撃退用のスプレーを取り出し、戦闘態勢に入った。 
人影は私の期待を裏切り、こちらに向かってきた。 
心臓が高鳴る。


自動販売機の近くにある電灯が、人影を照らした。 
隣に住む社会人だった。何やってんだ私。 
軽く会釈し、マンションへと向かう。 
気にしすぎだ。
疲れてるのかなと思いながら、マンションに入り口に入ろうとし、自分が先ほど隠れていた自動販売機の方を見た。
電灯の下に人がいた。 
葬式で見た顔。ファミレスで見ていた顔。エレベーターの中にいたあの顔。 
健二は微笑みながらこちらを見ていた。 
私はマンションへと走った。 

エレベーターは一階に止まっていた。 
エレベーターで行くか、階段で行くか・・・。 
私はエレベータに乗り込み、5階のボタンを押し、閉のボタンを押した。 
はやく閉まれ。閉まれ閉まれ閉まれ閉まれ! 
私の願いが通じたように、エレベーターは健二がたどりつく前に閉まってくれた。 
エレベーター越しに健二を見る。
健二はリュックサックを背負っていて、手にはサバイバルナイフを持っていた。 
辿りつく前にエレベーターの扉が閉まり、私はとりあえず安心することができた。 


もう安心だ。
エレベーターから健二を再び見ようとしたが、健二の姿は見えなかった。 
そうだ、階段があるじゃないか。なんで安心してるんだ。 
はやく5階についてくれ!!そう祈りながら、5階のボタンを狂うように押した。 

5階につきエレベーターから出た。健二はまだ来ていない。 
階段を昇る音が聞こえる。音は近づいてきている。 
もう4階くらいかもしれない…。私は急いで自分の部屋の前に行き、カバンから鍵を取り出そうとした。
焦って鍵を落としてしまった。 
急いで拾う。拾いながら階段の方を見た。 
健二はもう5階についていた。 
こちらに走って向かってきている。 
私は鍵を拾いドアを開け中に入る。 
入った瞬間、扉がドンと叩かれた。 
たぶんサバイバルナイフで刺したのだろう。 
私はなんとか鍵をかけることができ、チェーンをかけ、トイレに向かい鍵をかけた。 
しばらく息ができなかった。



その3  狂気   に続く
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