本当にあった話。 
うちの親父が釣り好きで、俺も昔はよく一緒に付いて回ってた。 
その中でも特に渓流釣りが好きで、解禁日にもなると二人でよく釣りに行ってたんだ。 

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俺がまだ小学生の時。 
その年は新しい穴場を見つけようとして、普段は行かないような山奥まで進んでいった。 
つっても有名な川なので、同じように考えてる釣り人はたくさんいる。 




奥に進む途中にも、川のそばでテントを張ってる人なんかも居たりした。 
渓流釣りってのは結構危険なもので、事故や遭難はもちろん、クマみたいな野生動物にも注意しなければならない。 
俺と父親も、ラジオとクマ避けの鈴をもち、定期的に爆竹を鳴らすなどの細心の注意をはらってきた。 
その日に見つけた釣り場は最高で、あっという間に魚入れが満杯になった。 
二人して満足げに下山したその時、異変に気付いた。 
来る途中に見かけたテント。 
その付近が異常に獣臭いのだ。 
テントの外には、食べ物の容器や衣服などが散乱している。 
子供の俺でも、すぐにクマの仕業だとわかった。 

もしかしてまだ近くにいるんじゃ... 
そう考えると震えが止まらなくなった。 
父親は、何も言わずに黙々と歩き続けている。 
来る時に見かけたテントの住人は無事なのだろうか。 
もしかして、もう死んでいるのでは? 

そんな俺の心を見透かしたように、父親が言った。 
「絶対に近づくなよ。落ちている物にも触るな。クマが取り返しにくるぞ」と。 
それから車に戻るまでの道のりは、生きた気がしなかった。 
これまでの人生の中で、あの時ほど死を意識したことはない。 
その後のニュースで、テントの持ち主はやっぱり死んでいた事がわかった。 

ツキノワグマでもクマはクマ。 
皆さんも山に入るときは気をつけて。



 
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