二年前、爺さんが死んだ。とは言え誰しも死ぬから別に怖い話じゃないよな。
喉頭がんでまあ余命宣告されてたんだ。老人だからね、わざわざ手術しないでも元気に過ごして
死んだほうがいいだろうって話でまとまった。

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もちろん婆ちゃんと俺の家族とも話し合って無理な延命措置は取らずに
自発呼吸ができなくなったらそこで寿命が来たってことにしようということでまとまった。






病院に入ってから爺さんはかなり怯えてたんだ。悪魔が見えるとか言っていて。
死ぬってわかったらそりゃ怖いわ。みんなで励ますって言い方は変だけど、元気づけてたよ。
でも、幸いにも痛みは無かったようで苦しくは無かったみたいなんだ。

老い先短いこともわかったし、俺はちょこちょこ病院に顔を出してたんだ。死んでから顔出しても意味ないしな。
ある日、お見舞いに行ったら爺さんが「おい、お前、外をみてみろ」ってしきりに言ってたんだ。
窓枠に虫でもついたのかなって思っていろいろ見てたけど、結局は何もなかったんだ。
何もねーよって言ったら、爺さんが「ああ…お前たちには見えないんだな」とだけ言って黙った。

その後、爺さんは窓をずっと眺めてた。30分ぐらいかな。

すると爺さんが急に口を開いて「俺、あと1週間したら死ぬわ」って言ったんだ。
俺たちびっくりして。だって検査の結果も悪くないし、1週間後に死ぬなんて全然考えられなかった。
お医者さんもあと1ヶ月は大丈夫でしょうって言ってたぐらいだった。
俺達はちょっと気味が悪くなったのもあって、何も聞かずに帰った。

それから三日後、改めて爺さんと話をしてこの前の話を聞いたんだ。
今までの怖がってた顔とは打って変わって安らかな顔をしてた。それで爺さんは「お母さんとお父さんが迎えに来たんだ。死ぬときも教えてくれた。」って言った。

結局、爺さんが言った日ちょうどに死んでしまった。


こんな不思議なこともあるんだなあと思ったよ。
この後、少しだけ後日談があるんだ。
爺さんが死んでからしばらくして俺が寝ているときに夢に爺さんが出てきたんだ。
夢の中で爺さんは「楽しい人生だったし孫に恵まれてよかった」と。
「お前があの学部に入ってくれてよかった。俺は嬉しかった」と。

生前の爺さんからそんな話を聞いたことなかった。
目がさめて、その後親戚にそんな話をしたら俺にはそんな顔をしなかったが、親戚いわく、爺さんは俺が大学に入って相当喜んでたらしい。
もともとはうちのおふくろにそういうことを勉強させるつもりだったらしい。

それを聞いて、あの時はまだ現世に魂があったんだなって漠然と思った。


なんか自分語りをしたようで済まないね。
あんまり怖くないけど、霊的な体験をしたのはこれが生まれてはじめてだったよ。



 
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