私にはなぜか祖母が見える
死んだ祖母
見えるようになったのは祖母が死ぬ一週間かそこらくらい前から
私は両親と暮らしてて、祖母は新幹線で五時間の距離のところに伯父一家と同居してた
ところが階段から落ちて骨折してからみるみる弱り、動けなくなって最後は病院で亡くなった
祖母は末っ子で三男の私の父を溺愛していたようで、
病院でずっと父とその娘である私のことを呼んでいたらしい

640



そのせいか祖母が死ぬ前、よく私の枕元に立つようになった
要件は一つ、もう死ぬから最後にひと目三男の父の顔を見たい、連れてきてくれ






私は家庭を顧みず、母に「お前が産んだ子供の食い扶持くらいお前が稼げ」と
母に言ってのけた父が大嫌いだったた
金の無駄だから中卒で働けと私の受験を邪魔する父が私の言葉を聞くとも思えなかったが、
祖母の最後の頼みだから一応伝えてやった
帰ってきたのは暴力
「縁起の悪いこと言うな」と言われ、毎日枕元に立つ祖母の懇願はついに聞き入れられなかった
なくなる日に祖母から「どうして願いを聞いてくれなかった」と一方的に言われたが
(こちらの声は届かない)
そう育てたのはお前だろとしか思わなかった

受験があったし葬式にも行ってなかったので聞いた話だが、
亡くなるまでの一週間ほど、私の写真を握りしめて離さなかったらしい
「だから君の写真を一緒に棺桶に入れたよ」とドヤった声で言われて、
そいつの写真を祖母の墓に埋めることを決意した
それが原因かは解らないが、祖母が見えるようになった
常ではないが、時々私の視界に立っている
訴えることは一つ、
「私の可愛い息子が誰からも愛されてない、家族なんだから愛してやって」ということ
無理、だって父は私や母に愛情を向けたことがないから
時々うるさい以外、祖母はずっと悲しそうな顔で父を見てる

一度霊感が強くて見える人に父が会ったそうで、
ある日「オカンが俺のこと心配してよく娘のところに来てるっていうんだが?」と聞いてきたことがあった
「は?見えるわけないでしょ」と言ったら「お前能無しだもんな」と納得して何処かに行った
祖母の思いが成就することはこの後一生無い
母は父が死んだら死後離婚すると決めてるそうだ
今はATM扱いしてる
私も就職したら家を出る
祖母はどこまで私についてくる気か知らないが、
私についてきても、あと数年もしたら可愛い可愛い息子は見られなくなる



 
カテゴリ
タグ
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック