ある日、仕事で地方へ出張した時、仕事が予定より早く終わってしまい、
あまり来ることもない土地だからどこか観光でもしていこうと思った時のことです。
スマホで調べましたら近くに歴史ある大きな神社があることが分かり、立ち寄って見ることにしました。







その神社は重厚な造りの神社で、かなり広い境内を持っていました。
参拝を終え、拝殿以外にも何かあるのかなと神社の案内図を見ていたら、
その神社から山の方に延びる参道を30分くらい歩いた先に、その神社の奥の院があることが分かりました。
時間はありましたし、その日は薄曇りで日差しが柔らかく初夏の気持ちの良い風が吹いていましたから、ハイキング気分でついでに奥の院にも参拝に行くことにしました。
その奥の院に至る参道は片側がかなり高い崖になっており、もう片側は木々や草が生い茂る急斜面となっていました。
道自体は参拝者が歩きやすいよう整備されていて、所々に休憩場所もありました。
道にはヤモリがいたり、あまり見かけない蝶やトンボが飛んでいたり、鳥の鳴き声や風が草木を揺らす音など自然の音だけが聞こえ、山歩きも案外楽しいものだと、その道程を中ほどまで差し掛かった時です。
山側の斜面から木の枝がメリメリ折れて落ちる音、藪をガサガサかきわける音が聞こえてきました。
最初は風のせいかとも思いましたが、枝を落とすほどの強い風は吹いていませんし、一方向からだけ聞こえてきます。
何か変だなと思いつつ歩を進めましたら、その音は少しづつ近付いているようにも聞こえてきます。
何か重量のあるものが山の中を動いているような音、もしかしたら、道は無いけど山仕事の人がいて枝を落としている音かもしれないな、と思いかけたその時、
前方から遠く鈴の音が段々大きく聞こえてきて、参拝を終えた人がこちらに向かってきました。
「こんにちわー」
「こんにちわー」
挨拶を交わし軽く会釈してすれ違ったら、あの音はすでに聞こえなくなっていました。
どうも気のせいだったようです。
でも熊鈴は持って行った方がいいと思います。





 
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