結構前の話で俺の体験談なのだが。
ある日、同僚♂が連絡もなく出勤しなかった。無断欠勤などしたことがない人だった。
何度か携帯に電話をしたが「電源が入っていない」と言われるだけ。
上司が自宅まで行ったが不在だったので、仕方なく親に連絡して来てもらい、管理人と親の立会いの下、部屋に入るも不在。
親が警察に届け出たが事件、事故の可能性が低いためしばらく様子を見ることに。





2週間くらいたって進展がないので、親が弁護士を通して警察に捜索をお願いした。
数日後「最後に携帯があったと思われる位置」と警察から教えられた情報は、某県の山中の駐車場にあった基地局。
そこから登山道に入って1時間ほど歩くと圏外になるような場所。
親が警察と消防などと一緒に最後に携帯のあった付近を捜索しても見つからず。
彼からは登山をしているなどという話を聞いたこともなく、まして行方不明になったのは週の真ん中で平日だったので、彼が山に行く理由などなかった。


それから少し経ったある日のこと。
仕事中に俺の携帯に着信があった。よく画面を確認せずに電話に出るも向こうから声はせず。
電波が悪いと思い「聞こえますか?」と何度か繰り返すも応答なし。
一旦切ってから掛けなおそうと、相手を確認すると行方不明になっていた彼からの電話だった。
「彼からの電話だ」と近くにいた同僚に声をかけ、何人かで「どこにいるんだ?」と声をかけるが応答なし。
うっすらと聞こえてくるのはジャリジャリジャリといった電波ノイズのような雑音のみ。
数分するとプツッと電話が切れた。
すぐに彼の親に知らせ、親から警察に情報が伝わった。
数日後に親から連絡があり、警察が調べたところ電話はずっと離れた地域でかけられたことがわかった。
社内では当然のことながら「殺されたのでは?」といった噂が流れた。

それからしばらくして彼の遺体が見つかった。
場所は行方不明になった前後にいたと思われる山中で。登山者が発見した。
発見時、彼は登山用の道具を身に着けていて、その道具の一部を自分で購入したことがわかった。
警察は転落死で即死だったと思われるとだけ。
しかし携帯は持っていなかった。


彼の当日の足取りは、深夜に家を出て自宅付近で車に乗った可能性が高い。
これは警察が携帯の電波から割り出した情報。
だが彼は車を持っておらず、レンタカーを借りた形跡もない。タクシーに乗ったという情報もなく、
また行方不明になった山の駐車場にも彼が乗っていたと思われる車もなかった。
その山は長い登山ルートがあり、途中に山小屋もあるため、ハイシーズンには昼夜問わず登山道に入る人がいる。
彼が山に入ったときの目撃情報を得るため、親が何度か足を運んで聞き込みやビラ配りをしていたが何も得られず。
彼が即死だったなら彼の携帯で電話をかけてきたのは別人であることは明白で、登山未経験であると思われる彼がひとりで突如として険しい山に入る可能性も低い。
自殺をするつもりなら登山道具を事前に購入することもないだろう。
親が弁護士を通して警察に何度か捜査をするようお願いしたようだが、今も事故死で処理されてそのままのようだ。



 
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